発達支援研究会(仮) in 沖縄

沖縄の発達支援に関心のある方々のための情報発信スペース。 HPも立ち上がりました。https://sites.google.com/site/hattatsuken/

子育ての外注化
2008年07月07日 (月) | Edit |
 「子育ての外注化」。ちょっとショッキングな言葉ですが、育児を金銭で解決する時代になっているのではないかという、著者の警鐘はよくわかります。

 紹介したい本は、「子育ての危機〜外注化の波を防げるか〜」前原寛著 創成社です。

 第1章は「便利さを求める社会」で、家庭の食事が外注化していったように、子育ても外注化という波にさらされていると主張しています。

 第2章「家庭から失われたもの」では、共同体における家庭という概念が崩壊して、楽しむことが家庭の主機能になっていき、生活的機能を失いつつあるとの指摘です。

 第3章「エンゼルプランの功罪」では、エンゼルプランという少子化対策によって「子育ては支援されるもの」となったのはよいのですが、ワーキングマザーの支援、次いで専業主婦の支援に進んだ結果、主に保育所に対して子育て支援の要求が集中していったことを挙げています。

 第4章の「子育ての担い手は誰か」では、子どもを社会全体で支えるという意識が持ちにくくなり、子育ての外注化によって養育責任を保護者が逆に園側に追わせる、あるいは、金銭で適切な養育結果を買う時代に入っていると指摘します。

 第5章の「子育て支援の在り方を問い直す」では、保育と子育てが分離する危機を迎えているとして、子育て支援と保育の統合(それが託児との違いでしょうね)を目指すべきだとしています。

 新書版でページ数が限られた中で、非常にわかりやすく現在の保育の問題点を書いている本だと思いました。




発達障害の早期支援
2008年07月01日 (火) | Edit |
 福岡県糸島地区という人口約10万人の小規模な市町村で行われている新たな地域発達支援システムが全国的な注目を集めています。

 「糸島プロジェクト」と呼ばれるこの早期発達支援システムは、出生から就学時にわたる大規模なコホート(前向き)調査によって、発達の道筋を示し早期に発達障害の兆候を読み取り、支援に結びつける実践を行うためのものです。

 いわゆる保健師を初めとした多職種の専門家たちが参加した、この生活モデル型の発達支援はとてもユニークなものです。

 このプロジェクトを統括してきた大神英裕先生は発達心理学・障害心理学の専門家であり、特に共同注意の研究で知られています。

 それで、その調査研究の報告というべき、今年2月にミネルヴァ書房から「発達障害の早期支援」という著作が出ています。

 さっと目を通しましたが、早期スクリーニングにおける共同注意の発達段階や多段階療育システムなど、現在広く地域で行われている発達支援の現実的な統合版ともいえる内容になっています。

 移行ステップの問題など、困難で曖昧ではあるけれど現実に起こっている問題を直視し、具体的な方策を提示していることも興味深いです。

 療育内容にはさほど触れられていないのですが、保健ベースでの発達段階の評価や初期支援に関しては充分触れられていると思います。

 関心のある方はどうぞ!





医療における子どもの人権
2008年05月29日 (木) | Edit |
 子どもの権利について書いたので、次は「医療における子どもの人権」という本を取り上げてみましょう。

 本書は、栃木県弁護士会「医療における子どもの人権を考えるシンポジウム」実行委員会編で明石出版から2007年10月に出版されています。

 本書は、大学病院に入院させられたまま両親に遺棄されて4年近く経過した子どもの事例を通じて、栃木県弁護士会人権公害委員会(人権公害ってインパクトがある言葉ですね!)が2003年に研究会を発足させたのがきっかけなのだそうです。

 子どもの医療における人権の問題を研究し、その成果を2005年にシンポジウムを通じて発表した内容が本書の元になっているようです。

 医療外の法曹界の人たちが中心になって書かれてはいますが、病気になった子どもが病気だけではなく、社会の無理解にも苦しめられていると指摘しています。

 子どもの医療に対する社会の無理解と軽視、そして、医療側の必要以上の制限によって、子どもの人権が踏みにじられていないかと問いかけています。

 特に、面会時間のこと、入院生活中の遊びや学びのこと、子どもに対する治療説明のこと、子どもの自己決定のことなどを、順番に取り上げ、実際のアンケートを参照にしながら、わかりやすく現状整理し提言をしている点が見事です。

 




障害児の発達と保育
2008年05月01日 (木) | Edit |
 障害児保育のことを考えていたら、ある書籍のことを思い出しました。

 「障害児の発達と保育」 白石恵理子・松原巨子・大津の障害児保育研究会 編著です。

 2001年にクリエイツかもがわから出版された本で、2100円です。

 本書は、いわゆる「大津方式」という障害をもった子どもと親への支援の実践をまとめています。

 子どもの障害・発達に視点をおき、生活や遊びを豊かにしながら内面を育み、子どもの個としての発達、集団としての発達を保障する実践と指針を提起する内容になっています。

 第1章は大津の障害児保育のあゆみ、第2章は生活をつくる、第3章は遊びをつくる、第4章は仲間をつくる、第5章は保育集団をつくる、第6章は保育をつくる になっています。

 本書を編集した滋賀大学の白石恵理子さんの巻頭言が秀逸です。障害児保育、ノーマライゼーションとは何かについて手短に記されています。

 
・・・今から28年前に、大津の障害児保育制度がスタートしました。それは、お母さんの就労や家庭生活を支えると同時に、障害の有無にかかわらず、どの子も発達する権利をもっている、それを社会が実現していかなければならないという、発達保障の理念に基づく、「希望するすべての障害児の保育園への入園」をめざした制度でした。
 ・・・乳幼児健診における障害の早期発見と早期対応から、やまびこ園・教室での早期療育と両親教育を経て、毎日通える保育園等での障害児保育につなぐという基本的なシステムができました。

 ・・・障害児保育に関する本をみると、就学前の障害児が保育を受ける形態として、障害児だけが通園施設や障害児学校幼稚部等の専門機関で療育・保育を受ける形態と、保育園・幼稚園等で健常児とともに保育を受ける統合保育の2つの形態があるという説明がよくされています。そして、「統合保育は是か非か」といった議論もされています。

 「ノーマライゼーション」という大きな流れがあることは事実ですが、一人ひとりの子どもの発達保障を抜きにした「ノーマライゼーション」、すなわち機械的な「場の統合」のみがすすむのは誤りであるということは、おおよその共通認識になってきていると感じます。

 私たちは、障害の有無や程度にかかわらず、すべての子どもたちの豊かな発達の実現が人権として保障されることこそが「ノーマライゼーション」であると考えます。

 ・・・こうした保育をすすめていくためには、保育としての高い専門性が求められてきます。私たちは、それを追究したいと考え、障害児保育に取り組んできました。

 ・・・障害児保育とは、保育園で行われるもののみをさすのではなく、通園施設と保育園のいずれの場での障害児保育も念頭においています。


 物理的に集団にいることがノーマライゼーションではありません。一人一人の子どもの発達する権利が保障され、かつ、親が子育てをする喜びを得られる支援が早期に必要なのですね。

 また、障害児保育の高い専門性が挙げられていることも見落としてはいけませんね。沖縄県はこの専門性が重視されていない点にも不幸があります。

 親密圏における障害の無理解、関係性のこじれ、そして、集団における疎外経験の積み重ねが子どもの二次障害、三次障害を生みます。

 幼児期はやはり親子それぞれに大切な時期なのですね。


 



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